人との出会いが、会社の未来を描き始める

先日、支援先企業の社長と打ち合わせを行いました。

まず驚いたのは、案件管理の件数が大きく増えていることです。

以前と比べて案件数が着実に増え、その内容も少しずつ広がっていました。

新規事業に取り組み始めたことで、これまで接点のなかったお客様との出会いが増えています。

特に印象的だったのは、世界展開を視野に入れる企業から、「より付加価値の高い素材を求めたい」という相談が増えていることでした。

差別化を図るため、大手企業を含め、この会社の技術に注目する動きが少しずつ広がっており、現在進んでいる案件の中には、今後数年間で事業の柱へ成長する可能性を感じるものもありました。

そこで私は社長に尋ねました。

「10年後、20年後、30年後、どのような会社になっていたいと考えていますか。」

社長は少し考えながら、こう話されました。

「工場や設備を大きくすることが第一の目的ではありません。

私たちの技術を生かして、付加価値の高い分野を切り拓いていきたい。

そのためには、自社だけではなく、協力会社との連携をさらに深めていきたいと思っています。

将来、一緒に取り組めるパートナーも少しずつ増えてきました。

そして、技術力の高い集団を育てていきたい。そのためにも、これまで私だけが持っていた情報を、できる限り社員と共有するようにしています。」

以前も何度か将来のことについてお聞きしたことがありました。

しかし今回は、それまでとは違い、自分自身の言葉で将来の姿を語られていたことが、とても印象に残りました。

続けて、

「そのための課題は何ですか。」

とお聞きすると、

「やはり人材です。この仕事は経験と知識が必要です。ただ、今すぐ人を増やせば収益を圧迫してしまいます。まずは新事業を軌道に乗せ、そのタイミングで人材育成や採用を進めたいと思っています。」

と、現実を見据えた考えも話されました。

現在、この会社では、高機能素材としての可能性を検証するため、大学での評価試験を近く予定しています。

期待する結果が得られれば、展示会への出展などを行い、新たな取引先との出会いにつながる可能性があります。

さらに、その技術は将来的に○○分野など、新たな用途への展開も期待されています。

もし高機能素材の分野へ本格的に展開できれば、現在の事業領域に新たな柱が加わることになります。事業の幅が広がることで収益力が高まり、人材を新たに採用・育成していくための基盤も強化されます。同時に、一つの分野や一社への依存度が下がり、会社全体の安定性も高まっていくでしょう。

実は、この会社は以前、○○分野の売上が大半を占め、さらに取引先一社への売上依存度は約60%に達していました。

そこから新しい市場へ挑戦し、事業領域を少しずつ広げてきたことが、現在の姿につながっています。

打ち合わせの最後に、社長がしみじみとこう話されました。

「野口さんと初めてお会いした頃は、会社がこんな方向へ進むなんて思ってもみませんでしたね。」

そして、続けてこんな言葉も話してくださいました。

「いろいろな人と出会う中で、『こんな風になりたい』『こんな経営者にあこがれる』という気持ちが、少しずつ強くなっていったんです。」

私は、その言葉がとても印象に残りました。

以前は、社長自身が現場にいる時間が長く、外へ出る機会は決して多くありませんでした。

しかし現在は、多くの経営者や企業、公的機関関係者などとの新しい出会いが生まれています。

その中で、事業を大きく成長させた経営者や、新しい挑戦を続ける企業に触れ、自社の可能性について考える機会も増えてきました。

人との出会いが人を刺激し、新しい情報が集まり、新たな可能性が見えてくる。

その積み重ねが、

「自分たちは、これからどこへ向かうのか。」

という問いにつながり、将来の姿を少しずつ描けるようになってきたのではないかと感じました。

私は、ビジョンは頭の中だけで考えて作るものでも、コンサルタントが作成するものでもないと思っています。

これまで私は、

どの市場へ向かうのか。

自社の事業領域をどう考えるのか。

これからどのような人材を育てていくのか。

といった問いを、折に触れて投げかけてきました。

その問いが直接、今回の言葉につながったのかは分かりません。

しかし、市場へ出て、多くの人と出会い、さまざまな刺激を受け、自問自答を繰り返す。その中で、

「こんな風になりたい。」

「こんな会社にしたい。」

という思いが少しずつ育ち、それが会社の未来を描く言葉になっていったのではないかと感じています。

私は今回の打ち合わせを通じて、人との出会いは新しい仕事を生み出すだけではなく、経営者が自社の可能性を見つめ直し、自分自身の言葉で会社の未来を描くきっかけにもなることを改めて感じました。

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