NHKスペシャル「ジャパン・リバイバル“安い30年”脱却への道」を見て

先日、NHKスペシャルを見て印象に残ったシーンがありましたので、シェアさせて下さい。
コロナ明けで海外から多くの観光客が舞い戻り、賑わいを多くの場所で取り戻していますね。でも日本はバブル崩壊後の30年で割安な国になってしまいました。

外国資本が日本の不動産、企業を買収する案件が増加しています。企業買収を手掛けるある会社ではこの2年で海外からの問い合わせ件数が4倍になったといいます。

ベトナムのGDPはこの30年で7倍になる中で、ベトナムの某日系縫製工場では最盛期2000人いたワーカーが500人に減少したと紹介されていました。かつて価格競争から日本の縫製工場は、賃金の安い途上国に移転したのですが、いまや途上国は著しく成長し、賃金が上がり、安い賃金の日本の縫製工場には人が集まらなくなってきているというのです。

インドでは蝶理の担当者がインド縫製工場の責任者と価格交渉をしている映像が流れていました。ZARAなどのブランドを手掛ける縫製工場です。日本において単価800円で販売されるTシャツは、インド縫製工場から1ドル65セント以下で工場から購入しないと蝶理は利益が出ないといいます。

工場の責任者はこれまでの関係から、しぶしぶ加工賃を削って、日本の言い値に近い数字を提示するのですが、蝶理担当者はもっと下げることを要求します。この交渉は不成立に終わり、ほかの工場でも断られるシーンが流れ続けました。

いまや、「日本はどこの国よりも品質が良いものを安く買いたがる」と言われているのです。

日本の縫製工場に海外回帰で注文が流れるケースが増えているそうです。海外で値段が合わなくなったものが日本に流れてきているのです。日本の縫製工場の社長は言っていました。「(かつて海外に移転したのに、困ったら回帰してくる)勝手なものだ」と。

日本企業が多く進出しているタイ。このタイにおいても日本企業は給料が安いということで入社を敬遠する動きが出ています。入社時は若干日本が上回っているものの、課長職の手前からタイ企業が上回り、その後、差は大きく拡大していきます。タイ企業は、今後、給料が20~40%上がるとの期待感から日系企業を敬遠する動きが出ているというのです。

世界競争力ランキングで30年前は1位だった日本。2022年時点は34位まで後退しています。

番組は、かつての日本は高付加価値品を作ることに専念し、人材への投資を積極的に行い賃金上昇に反映させた。この30年で日本はコスト削減と価格競争に汲々としてきたといいます。日本の人材への投資は米国のそれを大きく下回っています。

そして、今後の活路として海外企業との提携をキーワードとして挙げていました。

東京大田区の海苔の裁断機を製造しているメーカーが事例として紹介されていました。大田区ではかつて9000件あった町工場が今は半減したといいます。

裁断機メーカーの社長はインタビューの中で、

「お客さんのとこへ行くと、協力工場が数社集められていて、その目の前で、この仕事がいくらかその場で言え。この会社はこの値段で出しているけど、お前のとこは、これより低い値段を出せるかと、こういうレベルなんですよ」と答えていました。

ある日、海苔裁断機メーカーの会社に、大田区の担当者の紹介で台湾企業の副社長が来社します。その副社長はその技術を見て、意外なところにニーズがあると言います。そして、太陽光パネルの切断機を作りたいが協力してもらえないかと持ち掛けていました。

海苔裁断機メーカーの社長の言葉が印象的でした。

「つぼみを開花させる相手を海外に求める時期にきているかもしれない。海外にはニーズがいっぱいある。日本にはシーズ(技術の種)があったって使い道がない。シーズの使い道を海外企業の人達は知っている。」

Ev関連を手掛ける日本企業もこれまで積極的に行ってこなかった営業を海外企業に対して行い、新たな提案を行う映像が流れていました・・・。

この番組を見て、改めて思いますのは、高付加価値をどの市場に求めるかということです。

日本企業にも高付加価値を生み出す企業が多くある一方、賃金主体にコスト削減のみを追い求めてきた企業は限界にきていますよね。

日本の技術力は今も世界トップクラスです(このため海外から人材含め狙われているわけですが・・)。この技術力を市場とマッチングさせる動きが大事で(番組では区の担当者に仲介を依頼していました)、もう1点は市場を開拓する営業活動が重要だということです。

業務効率やコストカットも重要です。でもそれだけを追い求めた結果が、賃金水準がこの30年間変わらない日本の姿だと思います。高付加価値を生み出す方法を企業それぞれで考え、行動する時期に来ていると思いますし、その一方で、保有する技術力は高齢化等で年々変化していきますから、残された時間は長くないとも思います。

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