経営計画に取り組む意義

先日、あるクライアント企業の社長様と打合せを行いました。この会社は初めて経営計画を作成するのですが、会社が維持発展するために必要な数値目標を作成したところ、現状の利益、財務内容をはるかに上回る数字になりました。しかし、将来的に給与を上げつつ労働生産性を高め、財務内容を良化していくためには、この数字は絶対に必要なわけです。

肝心なのは、その利益をどうやって生み出すかです。

数か月前の社長との打ち合わせにおいて、目標売上高と限界利益をどのような市場、どの得意先で確保していくかを考えて下さい。と宿題を出していました。すでに、現市場と得意先等の分析は終えておりますので、このままではどうやっても利益計画の数字を確保することは出来ないことは分かっているわけです。売上が伸びつつある得意先の深耕を図るべきなのか、先細りしつつある得意先の巻き返しを図るべきなのか・・

社長は「う~ん、これは難しい。相当考えないといけませんね・・・」と言われましたので、

私は「机の上で考えても出てきませんから、これまで通り、外に出て情報を集めて下さい、きっと見えてくるものがあります。」と申し伝えてはいたものの、先日お会いするまでは、果たしてどこまで出来ているのか、あまり過度な期待は持たない方が良いかなと思っていたのです。

ところが、社長は早速行動し、あるルートを使って、既存の技術を用いた異業種の市場を紹介してもらったというのです。当該市場のある会社の社長とすでに面談を行ったとのことで、その市場規模を数字であげながら「会社の業績に寄与している既存市場がこのまま伸び続けるとは思えない。どうなるか分かりませんが、この市場であれば面白みがあると思うのです。」と話をされ、定性的な情報含め5年後の目標数値に落し込まれていました。

これが実現すれば、複数の柱が出来、業種がそれぞれ異なることでリスク分散になります。

新たな市場が販売計画通り進むかどうかは現時点では勿論はっきりしません。下振れるかもしれませんし、逆に大きく上振れるかもしれません。ただ仮にダメだとしても、社長は新たな市場をきっと探し出してくる、そんな予感がしたのです。

この日の私は聞き役に回りました。

社長は「世の中が変わりゆく中で当社も変わっていかなければならない。当初、知らず知らずのうちに視野が狭くなり、今までやってきた市場の中でしか物事を考えられなかった。営業というか外に出てみると良い会社もあり悪い会社もあり、そこで初めて自社の立ち位置が分かり、変えていかなければならないことが分かった。」

そして、「いろいろな人から話が入るようになってきた。ただ同時に課題もたくさん出てきて困っていますよ。」と笑いながら話されていました。

この会社の経営計画は半ば出来たも同然です。今後は新たな市場に対応するための内部態勢を検討頂き、経営計画を完成させ、次回確認させていただくことで打合せを終えました。

さて、先般、成行き経営についてお話させていただきましたが、業績が低迷している会社は特に、現在の事業構造をどのように変えていくのかを考える必要があると思います。成熟し衰退しつつある市場・得意先・商品構成では、いくら頑張っても業績の回復は難しいと思うのです。

経営計画はその作成過程で会社の維持発展に必要な利益を考えなくてはなりません。それは現状のままでは決して生み出すことのできない数字です。しかし社長が外に出て得意先や取引銀行などとお会いすると、意外なところにお困りごとや要望があり、やってくれる業者がなくて困っているなどの話があるものです。

このような話の中から、既存の技術で出来るもので、将来性があり、収益を確保できるものを拾っていき会社の態勢を構築していく。社員に会社の方向性を示し推進するために社員に具体的取組みを行ってもらう。

こうしたことを実現していくところに経営計画に取り組む意義があると思うのです。

5000社超の会社を指導された名経営コンサルタント故・一倉定先生は、「お客様こそ最大のコンサルタント」として社長によるお客様回りを推奨されています。是非、経営計画作成に取り組んでいただき、お客様回りを実行頂ければと思います。その過程で独自の情報ネットワークが徐々に出来てくると思います。それは他社が簡単に真似のできない、目に見えない貴重な資産になると思います。

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