支援前の状況
老舗の紙商社です。
社長は数字に強く、論理的な経営者でした。
私が支援に入ってから、収益改善は順調に進み、社員の給与引き上げも実現することができました。
しかし、その後は業績が伸び悩む「踊り場」の状態に入りました。
原因は明確でした。
営業活動が属人的であり、営業担当者それぞれが独自のやり方で顧客対応を行っていたこと。
また、長年蓄積してきた顧客データや商品データが十分に活用されていなかったこと。
さらに、顧客の潜在的な課題やニーズを掴みにいく営業活動へ十分に転換できていなかったことです。
収益改善の次の成長に向けて、営業のあり方そのものを見直す必要がありました。
第1段階 現状を知る仕組みをつくる
まず、営業活動の現状を整理しました。
どの顧客にどのような提案をしているのか。
どの顧客に成長余地があるのか。
営業担当者はどのように行動しているのか。
分析を進める中で、
営業活動が個人任せになっていること、
顧客情報が組織の共有資産になっていないこと、
顧客のニーズを深く掘り下げる活動が不足していることが見えてきました。
一方で、現場には優秀な社員が存在することにも気づきました。
私は社長とともに、その社員たちを変革の中心メンバーとして巻き込みながら、次の成長に向けた取り組みを始めました。
第2段階 価値創造に向けた土台をつくる
まず取り組んだのは、考え方を共有することでした。
私は社長と社員に対し、顧客の潜在ニーズを捉えることで成長した企業の事例を紹介しました。
業種は違っても、顧客の現場へ足を運び、顧客が本当に求めているものを理解し、
新しい価値を生み出している企業には共通点があります。
これらの事例を通じて、
「顧客のニーズを深く理解することが成長の出発点である」
という共通認識づくりを進めました。
また、社長だけでなく、現場の優秀な社員たちにも積極的に参加してもらい、変革を推進する中核メンバーとして位置付けました。
第3段階 顧客の視点で見る仕組みをつくる
現在、この会社では顧客理解を深める営業活動への転換を進めています。
重要顧客はどこか。
その顧客は何に困っているのか。
どのような提案ができるのか。
これまでの「御用聞き型営業」から、
顧客の課題解決を考える営業への転換を図っています。
また、営業担当者個人の経験に頼るのではなく、顧客情報や気づきを組織全体で共有する考え方も浸透し始めています。
第4段階 気づきを形にする仕組みをつくる
そのための具体的な仕組みとして、戦略営業会議をスタートさせました。
この会議では、単に売上を報告するのではなく、
顧客の課題、
成長可能性、
提案内容、
行動計画
について議論します。
また、業務部が顧客データや商品データを分析し、営業活動に役立つ情報を営業担当者へ提供しています。
例えば、
「以前は継続的に購入していた商品が最近購入されていない」
「特定の商品群の購入量が減少している」
といった変化を抽出し、営業担当者へ共有します。
営業担当者はその情報をもとに顧客を訪問し、
「最近この商品のご購入がありませんが、何か変化がありましたか」
と対話を行います。
そこから顧客の状況変化や新たな課題が見つかることも少なくありません。
先日、この営業会議を行った際、業務部の課長が明るい表情で、
「野口さん、やり方が見えてきましたね!」
と言われました。
私は、この言葉が非常に印象に残っています。
顧客データを分析し、顧客との対話につなげ、そこから新しい提案を生み出していく。
その具体的な進め方が、少しずつ組織の中で共有され始めた瞬間だったからです。
第5段階 価値創造が継続する仕組みをつくる
私は社長や現場のキーパーソンたちと定期的に本音で語り合う機会を設けています。
会議では出てこない現場の課題や顧客への思い、新しいアイデアが自然に語られることも少なくありません。
そこで生まれた気づきは翌日に改めて整理し、実行すべきことを決定しています。
この積み重ねによって、社長の論理的な経営判断と、現場が持つ知見や感覚が少しずつ結び付き始めています。
価値創造が継続する組織へ向けた土壌づくりが進んでいます。
その後の変化
現在はまだ変革の途中段階です。
しかし、これまで個人で抱え込まれていた顧客情報や営業ノウハウが少しずつ共有されるようになり、
「顧客をもっと理解したい」
「会社全体で提案を考えたい」
という意識が生まれ始めています。
社長と現場の優秀な社員たちが同じ方向を向き始めたことが、この会社にとって最も大きな変化だと感じています。
今後の課題
今後は戦略営業会議をさらに定着させ、顧客の課題やニーズを組織全体で共有しながら、新たな提案へつなげる仕組みを育てていくことが重要です。
また、優秀な営業担当者が持つ顧客理解や提案力を組織全体へ広げることも大きなテーマです。
この取り組みが定着したとき、この会社は収益改善の先にある新たな成長ステージへ進んでいくものと考えています。
この事例から見えること
この会社は、
収益改善のその先にある成長を目指して、
個人営業から組織営業への転換に取り組んでいます。
顧客データを活用し、
顧客との対話を深め、
組織全体で提案を考える。
その積み重ねが、新たな価値創造につながろうとしています。
まさに、
「顧客の視点で見る」から「気づきを形にする」へ進みつつある事例
だと考えています。