デイサービスの事例

支援前の状況

この地域のデイサービス事業は、過去10年間で事業所の約3分の2が廃業・倒産に追い込まれるという厳しい環境にありました。

人手不足の深刻化。

大手介護施設との競争激化。

介護報酬改定による経営圧迫。

経営者であるご夫婦は、

「地域に必要なサービスを続けたい。しかし、このままで本当に生き残れるのだろうか。」

という強い危機感を抱えておられました。

そのような中、ご夫婦の息子さんが新社長に就任。

今後どのような施設を目指すべきかを模索する中で、私の顧問先を通じてご相談をいただきました。


第1段階 現状を知る仕組みをつくる

まず、新社長との対話を重ねながら、事業を取り巻く環境を整理しました。

地域の高齢化は進んでいる一方で、介護事業者間の競争は激化していました。

また、大手介護施設では利用者を囲い込む形のサービスが主流となり、一人ひとりに寄り添ったケアが難しくなっている状況も見えてきました。

その中で、

「この会社は何を強みとして生き残るのか」

を考えることから始めました。


第2段階 価値創造に向けた土台をつくる

新社長との対話を重ねる中で、

この会社が目指すべき方向性を言語化しました。

それが、

「認知症の進行を遅らせ、一日でも長く健全な暮らしができるお手伝いをする」

というビジョンです。

単なるデイケア施設ではなく、利用者本人とご家族の人生に寄り添う存在になる。

その考え方を軸に、

ホームページの刷新、採用方針の見直し、ケアマネジャー戦略の構築を進めました。

また、ケアマネジャーが利用者やご家族と長期的な信頼関係を築き、その中からサービス利用につなげる営業実行計画も策定しました。


第3段階 顧客の視点で見る仕組みをつくる

私は新社長とともに、認知症患者のご家族が集まる会へ参加しました。

長年にわたり介護を続けてきたご家族の話を直接聞くためです。

そこでは、

介護による心身の負担、

将来への不安、

家族だからこそ抱える葛藤など、

数字や資料だけでは分からない現実が語られていました。

中には、思わず涙ぐんでしまうような話もありました。

参加後、新社長は私に、

「来てよかったです。当時から現在まで、認知症をケアする施設がないことがよく分かりました。

私たちがつくらなければいけません。」

と話されました。

私は、この言葉こそがこの会社のビジョンの原点になったと感じています。

顧客を理解するとは、アンケートを取ることではありません。

顧客の世界に触れること。

この会社は、その第一歩を踏み出しました。


第4段階 気づきを形にする仕組みをつくる

この会社には、新社長の母親であり、現場のトップとして利用者やご家族から絶大な信頼を得ている所長がいます。

私は初めてお会いした際、

「この方はご家族との信頼関係を築く力が非常に高い」と感じました。

しかし、その力の多くは本人の経験や感覚に支えられたものであり、組織として共有されていませんでした。

そこで現在取り組んでいるのが、

所長が持つ顧客対応や提案活動の実践知を、他のケアマネジャーへ広げる仕組みづくりです。

同行や振り返りを通じて、ご家族への接し方、相談の受け方、信頼関係の築き方を共有し、

組織全体の力へ変えていく取り組みを進めています。


第5段階 価値創造が継続する仕組みをつくる

現在は、

業績評価制度、

インセンティブ制度、

柔軟な働き方を支援する制度

の整備を進めています。

ケアマネジャーは専門性が高く、人材確保が難しい職種です。

だからこそ、何を大切にし、何を頑張れば評価されるのかを明確にする必要があります。

また、利用者やご家族に寄り添う活動そのものが適切に評価される仕組みも重要です。

今後は優秀なケアマネジャーを採用・育成しながら、地域社会に必要とされるサービスモデルの確立を目指しています。


その後の変化

認知症患者のご家族と向き合う中で、

この会社のビジョンは単なる言葉ではなく、日々の行動の指針へと変わり始めています。

利用者本人だけでなく、そのご家族の人生にも寄り添う。

その考え方は、ホームページや採用活動、営業活動にも少しずつ反映されるようになってきました。


今後の課題

今後は、所長個人が持つ優れた実践知を組織全体へ広げることが重要です。

また、ケアマネジャー一人ひとりが利用者やご家族の立場で考え、自ら行動できる組織づくりも求められます。

この取り組みが定着したとき、地域から選ばれ、行政からも評価される、

新しいデイケアサービスのモデルへ近づいていくものと考えています。

会社が成長する循環は、これからさらに大きく回り始めようとしています。

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