フィルム商社の事例

支援前の状況

フィルムを扱う中堅商社です。

私が支援に入った時点で、売上高は直近3年間で約2割減少、社員の給与は横ばい。組織全体に重い閉塞感が漂っていました。

そのような中、営業出身のK氏が社長に就任。経営全般について十分な経験がない中で、会社をどの方向へ導けばよいのか模索されていました。

そこで私へのコンサルティングの依頼となりました。

第1段階 現状を知る仕組みをつくる

まず社長とともに経営計画の作成に着手しました。

・得意先のABC分析。
・商品別の収益性を分析。
・財務内容や資金繰りの確認。

これらを通じて、会社の現状を整理しました。

分析の結果、自社加工品の中に粗利率が非常に高い商品が存在するにもかかわらず、積極的に販売されていないことが分かりました。

また、今後5年間の損益計画とバランスシートを作成。収支ギリギリの状態から、経常利益1億円を目指す計画を策定しました。

一方で、

・低採算取引を増やすと売上債権ばかりが増え、自己資本比率の改善が進まないこと。

・大手メーカーとの支払条件の改善が必要であること。

・資金繰りの安定のため、最低でも月商1か月超の現預金を保有する必要があること。

なども確認しました。

経営計画の作成を通じて、社長と会社の進むべき方向を共有しました。

第2段階 収益改善と会社が前に進む土台をつくる

次に取り組んだのは収益改善です。ABC分析に基づき、収益性の高い顧客への訪問を重視する仕組みを構築しました。

また管理部門が毎月、粗利率の低い商品を継続的に洗い出し、営業部へ報告。地道な粗利改善活動を継続しました。

さらに、これまで積極的ではなかった自社加工品の販売強化を推進。与信リスクの高い取引先を洗い出し、貸倒れリスクの低減にも取り組みました。

私は営業会議にも参加し、これらの取り組みが継続されるよう支援しました。

第3段階 顧客の視点で見る仕組みをつくる

収益改善が進む中で、次の課題が見えてきました。

既存取引だけでは成長に限界があることです。そこで重要になったのが、顧客の視点で物事を見ることでした。

・顧客は何に困っているのか。
・どのような課題を抱えているのか。
・どのような価値を求めているのか。

営業担当者や管理職が顧客との接点を増やし、顧客理解を深める取り組みを進めました。

私は営業会議の中で、顧客の現場へ深く入り込むことで発展した企業事例について説明し、顧客視点の重要性を共有しました。

第4段階 気づきを形にする仕組みをつくる

顧客との接点が増えるにつれて、様々な気づきが生まれるようになりました。

そこで企画会議を立ち上げ、日常の小さな気づきを新しい価値へつなげる取り組みを始めました。

企画会議①

出入り業者の「ぼやき」から生まれた簡易システム

大手組合の現場に出入りする業者の何気ない一言。その「ぼやき」を幹部社員が拾い上げました。

社長自ら現場を確認し、「なぜそのような問題が起きているのか」、「どのような課題があるのか」を整理しました。

その後、企画会議の中で課題を言葉にし、課題解決を図る仕組み案をまとめました。さらに、「本当に必要とされる仕組みなのか」、「どのような方法で課題解決につなげるのか」について議論を重ねました。

その中で、組合加入企業の業務効率化を支援できれば、関係強化につながり、結果として当社フィルム製品の販売拡大も期待できるのではないか、という考え方が共有されました。

その過程では、システムの構想図や運用イメージも共有しながら、何度も改善を繰り返しました。

そして最終的に、組合加入企業の業務効率化を図る低コストな簡易システムの開発を決定。約1年をかけてシステムを完成させました。

この取り組みは、システム販売そのものが目的ではありません。お客様の課題解決を通じて関係を深め、その先にあるフィルム販売の拡大を目指した取り組みです。

一人の気づきから始まった取り組みが、言語化と議論を通じて具体的な仕組みへ発展した事例です。

企画会議②

女性社員の「主婦目線」から生まれた商品企画

ある日の企画会議で、女性社員が日常生活の中で感じた気づきを提案しました。
参加者からは「面白い」という声が上がりました。

そこで社長と幹部社員が製造工場を訪問。実際の製造工程を見たことで、新たな発見がありました。

帰りの車中で幹部社員が、「現場に来てよかった~!」と話したことが印象に残っています。

顧客の現場に触れたことで、既存の知識と現場での体感が結び付き、新たな商品開発の可能性が見えてきた瞬間でした。

第5段階 価値創造が継続する仕組みをつくる

新たな価値創造が継続する組織づくりに向けて、現在は、業績評価制度・等級制度・賃金制度の構築を進めています。

この制度では、売上や利益などの結果だけではなく、顧客の現場へ足を運ぶこと、情報を共有すること、チームで協力することなど、価値創造につながる行動も評価対象としています。

その後の変化

企画会議を継続する中で、社員が自ら課題を発見し、提案する場面が増えてきました。

また、新しい取り組みが少しずつ事業へ結び付き、業績も改善しています。

社員の給与引き上げも実現し、幹部社員が海外展示会へ参加するなど、新たな経験を積む機会も増えています。

今期は経常利益1億円達成の見通しです。社長からは「以前は考えることもできなかったが、経常利益2億円も考えられるようになってきた」との言葉も聞かれました。

社員が考え、挑戦し、新たな価値を生み出す取り組みが少しずつ定着し、会社全体の可能性が広がっています。現在は外部企業との連携や新規事業の検討を進めながら、さらなる成長を目指しています。

今後の課題

現在も会社は進化を続けています。

今後は重要顧客への理解をさらに深めるとともに、営業管理職が持つ顧客理解や営業ノウハウを組織全体へ広げていくことが課題です。

また、成功体験を共有する仕組みを通じて、価値創造が継続する文化づくりを進めていきます。

この事例から見えること

この事例は、収益改善の事例ではありません。

現状を知り、顧客を理解し、価値を創造し、それを継続する仕組みをつくる。その過程を通じて、会社だけでなく社長自身の経営に対する向き合い方も変化していきました。

会社が自ら成長する力を身につけること。私は、その仕組みづくりを支援しています。

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